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「相田みつを美術館」を訪れて



 









今年の初め、行きたいと思って手帳に書き出していたところに「相田みつを美術館」がありました。年末押し迫った今頃、やっと行って来ました。

相田みつをさんという方を知ったのは、弊社でお世話になっている口腔外科の齋藤道雄先生の歯科医院でした。治療をしていただいている時、いつも目の前にあるカレンダーに書かれた言葉に魅かれていました。ある時先生に尋ねると、相田みつをさんの親族が治療にいらしていて、いただいたものだと話してくださいました。

3.11の震災後「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」のコトバが印象に残り、私の中で、相田みつをさんへの関心が益々強まっていきました。
たった17文字で構成されるこのフレーズに、こころを打たれる人がなんて多いことか・・・。

美術館の中は、たっぷりとスペースがあり、隣の詩を邪魔しないように間隔をおいて様々な詩(コトバ)が飾ってありました。
ひとつひとつじっくりと噛み締めるように心で読みながら眺めていきました。

誰もが持ちうる感情を実に簡潔な言葉で表現されています。それは、巧みという類のものではないように思われます。
人生の苦悩、日々の生活、人との関わり、ひとの迷いや希望、人間の煩悩、ひとの至らなさ、願い 等々。
少しの装飾も感じられませんでした。だからこそ、人々の心に響くのかもしれません。
‘いのちの根’ という表現がいくつかの詩の中にあり、とても印象的でした。
生きることと対話していた相田みつをさんの姿がよく伝わってきました。

相田氏は、道元師の『正法眼蔵』を愛読されていたようです。実物が展示してあり、文字を目で追ってみましたが、私にはすんなり解読するのが困難でした。
「道」を求める心が備わっている人だったのがうかがえました。

以前、WEBで「相田みつをさんの文字が優れているとは思わない。」と中傷めいた感想を述べている方の文が目に留まったことがあります。確かに、お手本になるような文字ではなく、いびつな文字ではあります。それが人間味あふれて、なんともいえない情感をかもし出すのが魅力なんですけどねえ~。
みつを氏が20代の頃書いたという物も映像で拝見しました。多くの賞をいただいたそうです。四角の枠にきちっと収まる文字のお手本のような大変端正なものでした。そういう書家としての道を歩み続けることもできたかと思うのですが、自らの世界を探求したのが、相田みつをさんなんですね。

みつを氏の言葉に触れたければ本を買えばよいのですが、美術館を訪れてよかったなと思ったのは、ビデオ映像を通して生前の姿を拝見し、声をお聞き出来たことでした。お顔や雰囲気などあえてイメージしていたわけではありませんが、意外に厳しい雰囲気をかもし出されていたので驚きました。
それは、きっと、ひとつの道を追求して生きてこられた真摯な眼差しから醸し出される雰囲気だったのだうと思います。

詩の中に観音さまのお話がよく出てきました。私は、仏教とか観音様とかにあまり縁がなく仏像のイメージしかありません。
ミュージアムショップで、観音様の写真をジッーと眺めていると、館長さんが隣の部屋で解説をされている声が聞こえてきました。
「観音さまのように、自分が心の全てを打ち明けられる友がいるかどうか、自分は誰かの観音様になっているかどうか、それを伝えたかったんですよ。」と。ふむふむ。



 
私は、1枚しか上げるあてのないポストカードを4種類買いました。
1枚は、私の観音様である友人に差し出し用。もうじき、長く務めた職場を去ることになっているという友人ですが、新しい道は、まだ明確になっていないという話を聞きました。その友人へのメッセージ。
残り3枚はどうしようかな・・・。

ちなみに、美術館に入館しなくてもミュージアムショップは無料で入れます。いろんな本、カレンダー、ポストカード、手帳、ペン、タオル等がありましたよ。

コトバというものは、使う人の内面を如実に表すとともに、また、人に実に大きな影響を与えるものだと改めて感じています。

投稿者:高井貴容  更新日:2012年12月26日

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